古代史の散歩道 - 伎楽面呉女
伎楽面呉女
(ぎがくめんごじょ)は、
正倉院
に保存されている
伎楽
で用いられる呉女の面でである。
概要
百済からの渡来人
味摩之
(みまし)によって伝えられた伎楽は、平安時代初期頃まで寺院における法会で盛んに上演された。楽器伴奏のある無言の仮面劇であり、仏教音楽として法会や行道等に用いられた。
本作は伎楽で唯一の女性の伎楽面である。正倉院の伎楽面は171面が伝わる。伎楽では蛮人の崑崙に恋い慕われ、手荒な扱いを受けたところを力士に助けられる(興福寺の雅楽家である狛近真『教訓抄』)。愛嬌のある顔立ちとなっている。
構成
桐の一木から彫りだし、面裏を平滑にし、黒目と鼻に孔を開ける。髪を総髷に結い、正面頭上に三角形の飾りをつける。頭髪を白地に黒漆塗とする。面部は粗い白下地の上に粒子の細かな白色を重ね塗りする。最後に淡い黄色で塗る。眉、目の上下瞼、黒目、鬢髪の一部を隅で塗る。唇は暗い赤色で塗る。X線回折により白色の部分に多量の鉛が検出され、鉛系白色顔料を使用したとみられる。
製作地
面裏に「讃□」の墨書があり、讃岐国から献納されたとみられる。
装飾
頭に黒紫の頂巾をつけ、緋地錦の背子、赤紫の襖と緋紫の襖をかさね、纐纈の紕裳に白地の下裳をつける。
類例
東京国立博物館
に木造伎楽面(法隆寺献納、N-225)がある。写実的で、清楚な印象がある。彩色はほとんど剥落するが、全体に胡粉彩色が施される。キリ製彩色、縦33.9 横20.5。
管理
名称:伎楽面 木彫 第11号
倉番:南倉 1
用途: 楽器・楽具
技法:木竹工
寸法:縦30.6 横18.8 奥行22.5
材質・技法 :桐 顔面は彩色(白 一部は赤・墨描) 頭部は黒漆塗 一部彩色(赤)
出展歴
名称:伎楽面 木彫 第11号
1995年 - 第47回
2009年 - 第61回
2022年 – 第74回
参考文献
奈良国立博物館
(2008)『正倉院展60回の歩み』奈良国立博物館
奈良国立博物館
(2022)『正倉院展第74回』仏教美術協会
木村法光・成瀬正和(1990)「宝物の調査 伎楽面」年次報告、正倉院紀要第12号