概要
履底は牛革2枚を重ねる。表面には文様のある紫地の錦を張る。履き口の周囲を別の錦で補強する。形状が特異であり、サイズも小さいので、女性用履物とする説がある。
内底の皮に「申 我孫伊可麻呂 八一日」と墨書されている。製作者の名前と日付と推測されている。中国新疆ウイグル自治区・トルファン市アスターナ古墳群から出土した「楽伎図」に錦貼りのサンダル様の履物を履く人物が描かれる。錦履は楽舞用の衣装であった可能性がある(参考文献2)。
構成
細くとがらせた先端を反り返らせる。革製の履で先端が花形に広がっていないのは正倉院では唯一の例である(参考文献3)。表に紫地窠文錦、内側に緋絁を貼る。履底は厚さ3cmの牛の一枚革を2枚折りとする。甲・側面・踵を包む上部を2枚の牛革を縫い合わせて継いでいる(参考文献3)。