古代史の散歩道 - 金銀平文琴
金銀平文琴
(きんぎんひょうもんきん,Kin with Gold and Silver Inlay)は
正倉院
に所蔵されている桐製の漆塗りの琴である。
概要
七絃琴は中国で楽器として完成された。
内部の墨書により唐の
735年
?
(開元23年)に制作されたと考えられている。唐代の少ない遺例である(参考文献1)。
わが国では「筝」と「琴」をいずれも「琴」としてきた。「筝」は柱を用いるが、「琴」は柱を用いないので、もともと異なる楽器である。
構成
桐材の木地に黒漆を塗り、
平文
技法により金銀の薄板を文様として漆地に貼って漆で塗りこみ、木炭で表面を研ぎ出して文様をあらわす。
筝の頭部には高士らが琴や
阮咸
などの楽器を奏で、酒宴に興じる姿が描かれる。槽側面には草花や鳥と共に、麒麟、獅子、鹿、鳳凰などの霊獣が描かれる。
構造
桐をくりぬいた胴に別の材を裏板にあて、漆を塗り、表面に
平文
技法を施す。頭部の四角形の枠の中に楽器を奏で、盃を傾ける3名の仙人が描かれる。下方には千鳥や波の文様が描かれる。四角の一面に琴の効用が書かれる。さらに2頭の龍と鳳凰、草花が銀で描かれる。3名の仙人がもつ楽器のひとつは
阮咸
である(参考文献2,参考文献3)。
模造
1879年(明治12年)に小川松民(蒔絵師)、神田重助(雅楽器製作者)、太田儀之助(金工家)、龍青眠(彫金家)、石黒政近(彫金家)らが模造再現した。東京国立博物館蔵となっている。
管理
倉番 : 北倉 2
用途 : 楽器・楽具
技法 : 漆工
寸法 : 全長114.5cm,額の幅16.0cm,尾の幅13.0cm
材質・技法 : 桐 漆塗 金銀
平文
臨岳・竜尾は
紫檀
出展
1949年 (東博)
1955年 - 第9回
1967年 - 第20回
1983年 - 第35回
1990年 - 『日本美術名品展』(
東京国立博物館
)
1999年 - 第51回
2019年 - 第71回
参考文献
米田雄介(2019)『すぐわかる正倉院の美術』東京美術
奈良国立博物館
(2008)『奈良正倉院展60回のあゆみ』奈良国立博物館
日本の名琴 金銀平文琴