国家珍宝帳記載の献納宝物である。笙は十七本の竹管を円形に配列する管楽器である。長さの異なる竹管を匏に植え込み、長い吹口から息を吸って吹奏する。
中国または朝鮮半島に起源をもつ楽器で、奈良時代に日本にもたらされた。中国の「皇清職貢図」(巻六「永寧協右管属九姓笛民」)に笙とみられる楽器が描かれる。
高さの異なる音を一度に鳴らすことができるから和音も吹ける。
壺と吹管は木製黒漆塗で、鏡板は水牛角製である。竹管と竹帯には真竹またはホテイチクを用い、帯は真竹またはハチクである。節の形から真竹と考えられる。ホテイチク、ウサンチクの可能性もある。竹管の一つに「東大寺」の刻銘がある。東大寺での法会で用いられたものである。阿弥陀来迎図には笙を奏でる菩薩が描かれることがあるから当時は仏教行事でよく使われていたであろう。