北倉に2つ(甲、乙)、中倉に4つ(第1号から第4号)ある。
甲、乙は
国家珍宝帳に記載された品である。「紅牙撥鏤尺二枚」と記され、
赤漆文欟木御厨子に納められていた。『大唐六典』には毎年二月二日に撥鏤尺と木画紫檀尺を皇帝に捧げる儀式が行われていたので、そうした儀式で使われたのであろう。
象牙を染め、その表面を浅く彫って文様を白く彫りあらわす撥鉚技法で製作された。寸の目盛りだけで実用品ではなく、儀式用と考えられる。表は一寸ごとの界線で十区に分け、唐花文5と鳳凰、尾長鳥、花鹿、飛鳥、水鳥をそれぞれ表す。
第一号から第三号はそれぞれ表面を10区に分け、唐花文、花鹿、鴛鴦を交互に配する。側面には小花文を表す。裏面に山岳、花弁、飛鳥を配す。
第四号は表の上半分、裏面の下半分を五区に分ける。唐花、鴛鴦で飾る。その他の部分は童子、
迦陵頻伽?、鳥を刻む。ところどころに緑、黄で彩色する。
牙はインド産の象牙で、硬質で上等のものである。牙の表面を塗る染料は紅色色素(綿臙脂)を用いた。赤色は染色に臙脂が用いられている。蛍光X線分析により緑色部分は銅を用いることが判明した。X線回析で緑色顔料はアタカマイトと判明した。