帙は書物を保護するために包みこむ覆いである。「最勝王経」は仏教の
経典?の一つで、金光明最勝王経のことである。経巻を十巻まとめて保管するための長方形の包みである。
「天下諸国毎塔安置金字金光明最勝王経」「依天平十四年歳在壬午春二月十四日勅」の文字を編み表す。紫紙金書金光明最勝王経十巻を収めていた。本品は
東大寺に金光明最勝王経を奉納したときに使われた包みと推測される。
続日本紀?には
国分寺?設置の勅は天平十三年三月十四日とし、類聚三代格、政事要略、院蔵の勅書銅板には
天平?十三年二月十四日と書かれており、以前から発勅の年次に議論があった。
喜田貞吉?博士、竹内理三博士は本銘をもってもっとも正しい年次とした。しかし帙銘だけで多くの資料を否定することは不合理である、とする説もある。
経典は天平十二年、天平十三年からはかなり降って製作されている。帙も同様と推測される。時代が下った製作段階で年次を1年間違った可能性もある。