聖武天皇の愛用品で
国家珍宝帳に「漆胡瓶一口」と記載されている。正倉院に瓶が三口伝わる。漆胡瓶、白瑠璃瓶、二彩の磁瓶である。漆胡瓶と白瑠璃瓶は、ともに注ぎ口が鳥の頭の形状である、把手がつく。この器は
ササン朝ペルシャで流行し、中国では西方を意味する「胡」をつけ、胡瓶の名称とした。全面に黒漆を塗り、草花や動物の文様は銀板の裁文を嵌装する「銀平脱技法」で製作されている。平脱は、文様の形にあわせた金や銀の薄板を張りつける技法である。ペルシャ式の形状と唐で発達した漆芸とが融合したものであり、東西文化の交流が伺える。
蓋、胴部、台脚に山岳、鴛鴦、ヤツガシラ、鹿、羊、蝶、蜂、草花をあしらい、蓋の環座には十二弁花弁をあらわし、把手および脚柱の節、台座側面には花菱文の装飾がある(参考文献1)。