古代史の散歩道 - 平螺鈿背八角鏡
平螺鈿背八角鏡
(へいらでんはいはっかくきょう)は、
正倉院
に保存されている八花形の輪郭に鏡背を螺鈿で飾った白銅製の鏡である。
概要
7号と13号とがあるが、2点が同時に出展されたことはない。鏡背は2区に分かれる。7号の方が区画は明瞭である。それぞれに明確な
唐花文
様が表される。
7号
国家珍宝帳
で7号は「八角鏡一面 重大五斤一両 径一尺一寸 緋絁帯柒皮箱 平螺鈿背緋綾嚫盛」と記載されている品である。
鏡胎を白銅鋳製、鏡背を
螺鈿
で装飾した
八花鏡
?
である。
鏡背は中心に円鈕を配置し、
螺鈿
の界線で内外二区に分ける。各区とも
宝相華
の文様を表す。内区に小ぶりな花文を表し、螺鈿には
毛彫
?
を入れる。外区は宝相華尾長鳥文と宝相華文を交互に表す。文様はトルコ石や青金石の破片をちりばめた地に
螺鈿
を表す。螺鈿で
花鳥文
?
をあらわす。花心に赤い琥珀、また文様の間地は黒い樹脂様の物質に白や水色の
トルコ石
の細片を鏤める。要所に双鳥文を飾る。
材料
花弁や花芯の赤い部分は朱色を下面に塗布し、琥珀片を伏せている。白色の
螺鈿
には
ヤコウガイ
が用いられる。胴の成分は唐の古代鏡と一致するため、唐からにの招来品である。第7号は鎌倉時代、1230年(寛喜2年)10月27日の盗難で大破したが、
1895年
?
(明治28年)に修理され復元した。黒色の地にトルコ石の砕片をあしらう。肉眼観察とマイクロウォチャーの観察により、
螺鈿
に用いられた貝はすべて
ヤコウガイ
であることが判明している(参考文献1)。
管理
第7号
名称:八角鏡 平螺鈿花鳥背 第7号
倉番:北倉 42
用途:調度
技法:金工
寸法:径32.8cm,縁厚0.7cm,重3514.8g
材質・技法 :青銅鋳造(銅約70%・錫約25%・鉛約5%)、
螺鈿
、
琥珀
(伏彩色)、トルコ石
第13号
名称:八角鏡 平螺鈿背 第13号
倉番:北倉 42
用途:調度
技法:金工
寸法:径27.4cm,縁厚0.7cm,重2150.3g
材質・技法 : 青銅鋳造(銅約70%・錫約25%・鉛約5%)、
螺鈿
、
琥珀
(伏彩色)、トルコ石
出展歴
第7号
1962年 - 第15回
1970年 - 第23回
1977年 - 第30回
1986年 - 御在位60年記念『日本美術名宝展』(
京都国立博物館
)
1996年 - 第48回
2008年 - 第60回
2018年 - 第70回
第13号
1960年 - 第13回
1973年 - 第26回
1984年 - 第36回
1994年 - 第46回
2005年 - 第57回
2019年 - 正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―(
東京国立博物館
)
参考文献
和田浩爾・赤松蔚・奥谷喬司(1996)「正倉院宝物(羅鈿、貝殻)材質調査報告」正倉院紀要 第18号