万年好奇心少年は、
白石太一郎氏の講演「考古学からみた邪馬台国と狗奴国」を一部引用して、批判を行っている(参考文献15)。当該講演を筆者は聞いていないので、ブログに提示された引用が正確かどうかは定かではない。また講演自体は刊行や公表もされていないので、内容を確認できない。そこで引用が正確なものと仮定して、内容に問題がないか以下に検討する。
まず「(白石氏の)専門外の文献史学に対するご指摘」(参考文献15)についてであるが、「基本的には文献史学上の問題である。ただ『魏志』倭人伝の記載には大きな限界があり、邪馬台国の所在地問題一つを取り上げても、長年の多くの研究者の努力にもかかわらず解決に至っていない」と白石氏が語ったとされる。この発言は白石氏としては不思議なものではない。その証拠に白石氏は著書で「(魏志倭人伝)史料だけでは邪馬台国の九州説と近畿説の決着がつかない」(参考文献16,p.70)と書いている。
万年好奇心少年は「文献史学による合理的で単純明快な『問題』解明が妨げられ、世人の疑惑を招いている」と書いているが、文献史学だけで言われるような合理的な解明は誰にもなされていない。故に白石氏が「問題」解明を妨げていると書くのは不当である。白石氏はむしろ考古学の助けにより、文献史学の限界を突破しようとしているのである。
大型前方後円墳の出現年代が3世紀中葉に遡るというのは、現代の考古学研究者の過半に及ぶ共通認識となっている。したがって、白石氏の説明は誤りとは言えない。万年好奇心少年は「力まかせに無根拠の幻想を捏ね上げ、思い込みを正当化するべきではない」と書くが、この大型前方後円墳とは箸墓古墳以後の古墳をいうので、批判する場合はまずそれらが3世紀中葉ではないことを証明しなければならない。それなくして「無根拠の幻想」と書くべきではない。批判するなら、まず自分の主張が正当であることを証明しなければならない。
- 考古学的な研究の成果にもとづき、邪馬台国と狗奴国の問題を考える
万年好奇心少年は「手前勝手などんぶり勘定」と評するが、その主張の根拠は示されていない。万年好奇心少年は考古学的研究の内容を知らずして、不合理な批判だけを声高に言っているだけである。なお白石氏の講演の論拠は白石太一郎(2013)に詳しく語られているから、そこに記載されている根拠自体に正当に反論しなければ、正当に批判したことにはならない。