魏志倭人伝に「男子はみなクジラのような顔で入れ墨を入れている」(「男子無大小 皆黥面文身」)と書かれている。「大小となく」の解釈は年齢説と身分説とがある。
- 年齢説は「大人も子供も(入れ墨する)」という意味とする。
- 身分説は吉岡郁夫(2021)に代表され、身分に関わらず入れ墨をしているという説である。
一般的には世界各地の文身習俗では、通過儀礼で大人になった証として入れ墨を入れるという。埴輪の男子は線刻がみられる事例がある。これは入れ墨とみられる。
倭人伝には「男子は」と書かれるが、女子は入れ墨をしたかどうか書かれていない。しかし女性の埴輪には顔に色ぬりをしたものがある。線刻の埴輪はなさそうである。男子とは異なる。
筆者の解釈であるが、女子は入れ墨はなく、化粧のための色塗り(ペインティング)と理解される。スウェーデンとハンガリーの研究者は、ボディペイントには昆虫を遠ざけ、病気から人々を守る効果があることを証明している(Gábor Horváthet al(2018))。ペインティングには実用的意味があったとみられる。上野塚廻り古墳群出土埴輪は王位継承儀礼での巫女の顔面彩色である(千田(2014))。