空也(くうや,903年-972年）は10世紀半ばの日本の僧侶である。念仏聖の先駆者である。阿弥陀聖（あみだひじり）、市聖(いちのひじり)とも呼ばれた。鎌倉時代の鴨長明は『発心集』で空也を「わが国の念仏の祖師」と記した。
概要
誕生
出家
播磨と阿波での修業
奥羽巡錫
938年の平安京
得度
十一面観音像立と大般若教の書写
入滅
慈善事業
参考文献
概要 
同時代史料は乏しいため、空也の足跡は断片的である。わずかに源為憲?が書いた『空也上人誄』(973年、以下「誄」とする)及び慶滋保胤の『日本往生極楽記』(985年)に略伝が記載されている。宮内庁書陵部に九条家旧蔵の『六波羅蜜寺縁起』があり、この中に空也伝が収載されている。これにより『諌』の欠損部分の多くを補填すすことができる。
誕生
空也の誕生は903年(延喜3年)とされるが、これは没年から逆算した年である。誄に「上人父母を顕さず、郷土を説くことなし」とあるように出生地は不明である。『日本往生極楽記』は「父母を言わず、亡命して世にあり」とする。914年頃(12歳)、空也は優婆塞となり、日本各地を遊歴した。優婆塞は在俗のままで、修行にはげむ男性の仏教信者をいう。女性は優婆夷(うばい)という。仏法僧に帰依し、五戒を守る。五戒は不殺生戒・不偸盗戒・不邪淫戒・不妄語戒・不飲酒戒をいう。誄に「少壮の日、優婆塞をもって、五畿七道を歴り、名山霊窟に遊ぶ」と書かれる。
出家
927年頃(延喜22年、25歳)、空也は尾張国で出家した。誄に「春秋二十有余、尾張の国の国分寺において、鬢髪を剃り落す。空也とは、自称の沙弥名なる」と書かれる。尾張国分寺はもとは愛知県稲沢市の尾張国府付近に置かれていたが、884年の火災で焼失したため、884年(元慶8年)に焼損し、愛知郡の定額寺の願興寺に役割が移ったとされる。尾張国分寺跡に金堂跡、塔跡、講堂跡などが確認されており、東西約200m、南北約300m以上の大寺院であったと推定されている。空也は尾張国分寺に住み、出家者の第一段階の沙弥になったと考えられる。そこでは『法華経』『維摩教』『仁王般若経』『金剛般若経』などを講読していたと考えられている。沙弥は修行中の僧の意味である。
播磨と阿波での修業
930年(28歳)、誄は「播磨の国の揖保の郡に峰合寺ありて、一切経論あり。上人化の道場に住まいて披閲するおと数年なりき」と記す。峰合寺は姫路市大市の、峰合山中にあったと伝えられる峰相山にあった峰相山鶏足寺と考えられている。空也は山中の寺で数年間修業していたと考えられている。誄は「阿波土佐両州の海中に湯島あり。観世音菩薩像ありて、霊験掲わるという。上人、観音に値わんとして、六時も恭敬し、数月錬行するに、終に見るところなし」。茲に粒を絶ちて像に向かい、腕上に焼香して、一七日夜、動かず眠らず。最後の夜、向かう所の尊像、微妙の光を放てり。」という。穀粒を絶ち腕上に香を焚いて七日七夜、不動不眠で朝、日中、日没、初夜、中夜、後夜の六時にそれぞれ1080回如意輪観音の小呪を唱える苦行を続けた。その修業により、観音を感得した。教化者としての自己を確立したと言われる。
奥羽巡錫
誄は「背に仏像を負い、継論を担い、便ち大法螺を吹き、微妙の法を説く」と書く。大法螺を吹くとは、『大正蔵』の「大法の雨をふらし、大法の螺を吹き、大法の鼓を撃ち、大法の義を述べる」から採られている。会津高野山とも呼ばれる八葉寺は空也上人により964年(康保元年)に建立されたと伝えられ、空也念仏踊りで知られている。
938年の平安京
938年(天慶元年)、京都に入った空也は、市中に隠れ住み、乞食の生活を送り、施しによって得たものは、自分のために用いることをせず、すべて、仏事の費用にふりむけ、また、貧者・病者への施しとしたとされる。誄は「その始め、市店に乞食し、もし得るところあれば、みな仏事をなし、復た貧患に与う。故に俗は市聖と号けり。また尋常の時、南無阿弥陀仏と称えて、間髪を容れず。天下また呼んで阿弥陀聖となせり」とする。乞食とは在家から食を乞い求めて自らの生命を維持し、その布施者に仏法と僧を支える功徳を施す托鉢の行である。
得度
948年(天歴2年)4月天台座主の延昌に推薦され、叡山で得度し大乗戒を受ける。
誄「天歴2年4月、天台山に登り、座主座主僧正法印和尚位延昌に従いて、之に師事す。僧正、その行相に感じ、推して得度せしむ。戒壇院に登り、大乗戒を受けたり。度縁文の名は光勝と注すれども、然も沙弥の名を改めざりき」。空也46歳であった。
誄「天歴2年4月、天台山に登り、座主座主僧正法印和尚位延昌に従いて、之に師事す。僧正、その行相に感じ、推して得度せしむ。戒壇院に登り、大乗戒を受けたり。度縁文の名は光勝と注すれども、然も沙弥の名を改めざりき」。空也46歳であった。
十一面観音像立と大般若教の書写
951年(天暦5年）、京都に疫病が大流行する。このとき空也は悪病退散のため一丈の十一面観音菩薩を造り、荷車に安置して踊りながら念仏を称え、市中をめぐったとされる。
誄に「五年秋、貴賤に勧め、知識を唱い、金色の一丈の観音像一体、六尺の梵王・帝釈・四天王像一体を造る。今、西光寺にあり」とする。現在六波羅蜜寺にある十一面観音像である。
951年(天暦5年）秋、『大般若教』の書写を行う。誄に「金泥の大般若教一部六百巻を写す。今、清水寺の塔院に在り」とする。13年後の963年（応和3年）に完成し、600人に高僧を招いて盛大に供養会か開催される。空也の最大規模尾事業とされる。
誄に「五年秋、貴賤に勧め、知識を唱い、金色の一丈の観音像一体、六尺の梵王・帝釈・四天王像一体を造る。今、西光寺にあり」とする。現在六波羅蜜寺にある十一面観音像である。
951年(天暦5年）秋、『大般若教』の書写を行う。誄に「金泥の大般若教一部六百巻を写す。今、清水寺の塔院に在り」とする。13年後の963年（応和3年）に完成し、600人に高僧を招いて盛大に供養会か開催される。空也の最大規模尾事業とされる。
入滅
972年(天禄3年)9月11日、西光寺で70年の生涯を閉じた。誄に「惟れ天禄3年)9月11日、空也上人。東山の西光寺に没せり、嗚呼哀しいかな」「春秋70、夏臈二十五。入滅の日、浴して浄衣を着、香炉を�欧欧凸У錣掘∪省�に向いてもって瞑目す。当にこの時、音楽天より来り、異香室より出ず。」
慈善事業
空也の慈善事業として、五畿七道で行った土木や灌概事業がある。「諌」に「若観道路之瞼難、預歎人馬之疲頓、乃荷鍾以錘石面、而投杖以決水脈」とあり、『縁起』に「観道路之瞼岨、荷鉢以錘巌石、臨江渠之於泥水、以亘橋梁」とある。人や馬が難渋する険しい道にさしかかると、鋤をかついで道路工事を行い、杖を投げて地下水を探し当て、そこに井戸を掘り、池を造設したという。
参考文献
- 石井義長(2009) 『空也 我が国の念仏の祖師と申すべし』 ミネルヴァ書房
- 奈良弘元(1987)「空也伝にみられる慈書事業」印度學佛敢學研究,第36巻第1號
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