縄文時代、弥生時代、古墳時代、飛鳥時代、平安時代など日本古代史の出来事と検討課題の考察を行う。考古学の成果も取り入れ、事実に基づき、合理的な歴史の再構築を図る。

藤ノ木古墳(ふじのきこふん)は奈良県生駒郡斑鳩町にある6世紀の古墳である。

概要

直径48mの大型円墳で、6世紀後半の築造と推定されている。1985年(昭和60年)、1988年(昭和63年)以来6度の発掘調査が行われた。出土品は重要文化財に指定され、現在は奈良県立橿原考古学研究所附属博物館で見ることが出来る。6世紀後半の埋葬儀礼を解明するうえにおいて貴重な資料となっている。

調査

斑鳩町教育委員会が町のベッドタウン化を心配し、1985年に樫原考古学研究所の協力のもと、調査を行った。飛鳥時代の馬具や王冠がほぼ完全な形でみつかり、飛鳥時代を知る重要な手がかりとなっている。

出土

1回目の発掘調査では全長14mの横穴式石室がみつかった。石室内は未盗掘であった。
石棺と奥壁の間の80cmのところに3組の金銅装の馬具、騎馬用馬具の挂甲、鉄製の農具のひな型品など3000点が盗掘を受けない完全な形で見つかった。中でも鳳凰や獅子、龍、怪鳥、獅子をあしらった高度な技術の透かし彫りのある金銅製鞍金具がみつかっている。分析の結果、日本製と判明した。石室の全長13.95m、玄室長6.0m、同幅2.3m、同高4.4mを計測する。玄室床面には一面礫が敷き詰められていた。床面の下には排水のための石組溝があり、羨道から閉塞石の下を潜り石室外へと延び、排水路が設置された。
そのほか武器・武具、装身具として金属製の玉類や1万数千点を超えるガラス玉などの装身具、冠・履・大帯などの金属製品、四面の銅鏡、玉纏大刀、剣が出土した。5振の太刀は最長138cmで、伊勢の皇大神宮の式年遷宮で使われる玉纒の太刀を彷彿とさせる。後期古墳には珍しい銅鏡が4面副葬される。

石棺

石棺は天皇家や有力皇族に用いられる家形石棺であった。大阪府と奈良県の境に位置する二上山で産出する白色凝灰岩を使用した刳抜式家形石棺で、棺の内外面に朱が塗られていた。棺身の最大長は235cm、最大幅139cm、最大高152cmで、頭側である東側が幅広く作られていた。蓋の長辺には左右各2個の縄掛突起が作り付けられる。

馬具

馬具は3セット分が確認された。豪華な馬具は、金銅製金具を用いた棘葉形杏葉、心葉形鏡板付轡、円形飾金具、歩揺付尻繋飾金具、龍文飾金具、鞍、障泥、壺鐙などである。装飾性豊かな馬具類は、鞍金具にパルメット、鳳凰、象、鬼面などの姿の透彫りをほどこしている。鞍金具は、当時の東アジアにおいても類をみない技巧と装飾を凝らした超一級品である。

土器

玄室内の袖部付近からは、須恵器・土師器が出土した。

金銅製冠

頭にまく帯部は二山をなす広いタイプで、そこに2枚の立飾りからなる金銅製の冠である。頭の周囲を巻く鉢巻状の帯・「冠帯」と、それに取り付ける「立ち飾り」とで構成される。製作当時は全体が金色に輝き、取り付けられた歩揺の輝きと薄い金属の触れる音色、宝石製の勾玉などの装飾が付けられていた。「広帯二山式」 は, 日本だけにある冠の形とされる。
アフガニスタンのティラ・テペ出土の金冠は, 藤ノ木古墳の冠と類似の樹木の立飾りがみられる。歩揺がある金銅製冠は新羅(皇南大塚北墳金冠垂飾、新羅5世紀後半)にもみられるが、形が異なる。
昭和63年6月6日、国宝指定。追加 平成3年6月21日。奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵。

被葬者

被葬者は2人であった。北側に17〜25歳の男性、南側は年齢を特定できないが、男性の可能性が高いといわれる。被葬者の手掛かりは少ない。江戸時代には崇峻天皇といわれ、地元に伝説も残る。方墳に移る時期の円墳であること、斑鳩は蘇我氏の墓域であること、2名同時の埋葬から、前園実知雄や白石太一郎は穴穂部皇子と宅部皇子を提唱している。玉城一枝は「藤ノ木古墳男女合葬説」を唱えた。そのほか紀氏、平群氏、膳氏説が提唱されている。

指定

  • 2003年(平成15年)に国の史跡・名勝に指定。

所在地等

春季と秋季に2日間、石室内部の特別公開がある。
  • 名称: 藤ノ木古墳
  • 年代:6世紀
  • 所在地: 〒636-0114  奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺西2-1795
  • 交通: JR奈良駅 から奈良交通 [98] 法隆寺前(奈良県)行「斑鳩町役場」下車

参考文献

  1. 大塚初重(2019)『巨大古墳の歩き方』宝島社
  2. 奈良県立橿原考古学研究所(1995)『斑鳩 藤ノ木古墳 第2・3次調査報告』斑鳩町教育委員会

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