古代史の散歩道

白銅鋳製の円鏡である。正倉院伝来の螺鈿鏡は同心円状に文様を配するものが多いが、本品は上下方向の文様構成となっている。

鏡背に螺鈿で花文の装飾で飾る円鏡である。鏡背を連珠文で2区に分け、内区は円鈕をめぐり、六つの花文とそれらの間を蕾文で飾る。外区は大輪の花文を六窠配し、その間隙を花文と花枝文で埋めている。花文は琥珀で飾り、花芯は下地に白緑彩色を施す。その上に金泥彩色した玳瑁をかぶせる。花心や花弁、葉の中心に赤い琥珀を嵌め、文様の間地は黒い樹脂様の物質に水色や白色、緑色のトルコ石の細片をはめる。

貝殻には成長線、肋、稜柱が認められるためヤコウガイと推定されている。紫外線を照射すると黄色の少ない白色蛍光を発する<ref>和田浩爾、赤松蔀他(1996)「正倉院宝物材質調査報告」正倉院紀要18号</ref>。玉石1cm〜3cmのトルコ石の砕石のみが使われる。6つの花芯には6cm×4cmの大きな一枚貝が用いられる。

正倉院には平螺鈿背円鏡が複数面ある。

• 円鏡 平螺鈿背　第９号　北倉42
• 円鏡 平螺鈿背　第10号　北倉42
• 円鏡 平螺鈿背　第11号　北倉42
• 円鏡 平螺鈿背　第２号 南倉 70 本品
• 円鏡 平螺鈿背　第５号 南倉 70

1. 1946年? - 東京国立博物館
2. 1961年? - 第14回　
3. 1967年? - 第20回
4. 1980年? - 第33回
5. 1996年? - 第48回
6. 2009年? - 第61回

• 登録名：円鏡 平螺鈿背　第2号
• 倉番 ： 南倉 70
• 用途 ： 調度
• 技法 ： 金工
• 寸法 ： 径39.3　縁厚0.9　重5410
• 材質・技法 ： 青銅（銅72%・錫23%・鉛6%）鋳造　螺鈿　琥珀（伏彩色）、トルコ石

1. 奈良国立博物館(1980)『第33回　正倉院展目録』奈良国立博物館