瑪瑙坏(めのうのつき,agate Cup)は正倉院に収蔵されている黒色の斑文入りの瑪瑙製の坏である。
正倉院の瑪瑙坏には大口と小口とがある。大口は葉形の外形をもち、一端に葉柄を作り、内側に八条の葉脈を浮き彫りにしている。表はそれに合わせて、溝堀り加工を施す。間に2本ずつの筋彫りを入れる。口縁がくぼむ部分に小さな把手を付ける。側面には原石から入っていたと思われる傷がみられるが修理はされていない(参考文献3)。小口はシンプルな盃型である。轆轤を用いず手で加工している(参考文献1)。
黄褐色の地に、黒い斑紋や縞が入る優品である。産地は明らかでない。中国では古来から、白玉、翡翠、水晶と並ぶ「玉杯」として珍重されていた。高貴な身分の象徴とされてきた。日本でも古来より産出され、弥生時代から古墳時代にかけては、玉の材料となっている。内側のくりぬき作業は、薄い刃で割り切り、叩いてかきこみ作業を行う。現在の研磨技術にも劣らない(参考文献3)。
1986年内蒙古自治区のチェリムモン盟陳国公主墓で出土した瑪瑙杯は、半透明で紅色の美しい斑が入った瑪瑙である。北京故宮物院には灰褐色の中に黒い斑文が混じった、斑縞のある瑪瑙の盃が展示されている。宋代瑪瑙器の優品とされる。
- 1949年 - 東京国立博物館、御物特別展
- 1952年 - 第6回
- 1963年 - 第16回
- 1979年 – 第32回
- 1990年 – 第42回
- 2003年 – 第55回
- 2021年 – 第73回
- 奈良国立博物館(2021)『第73回正倉院展』仏教美術協会
- 益富寿之助・山崎一雄・藤原卓(1988)「石製宝物の材質調査報告」正倉院年報,10号, p.3
- 詫間裕(1988)「正倉院石製宝物の工芸技法について」正倉院年報,10号, pp.16-18
タグ
コメントをかく