古代史の散歩道

正倉院の14種23面の伎楽面のうち「酔胡従」である。酒に酔った胡人の王である「酔胡王」とこれに仕える従者「酔胡従」が酒に酔うという演目で用いられた。伎楽面中に酔胡従は正倉院に46面がある。
劇中では最後に登場し、6人から8人の従者が酔胡王とともに酒宴を繰り広げる展開である。展示歴は少ない。延均師の作で、752年(天平勝宝4年）4月9日の大仏開眼会で、４部構成の伎楽の「後二」というグループで用いられた。

酔胡従という役柄の伎楽面である。酔胡従はそれぞれ表情が異なる。本作は目が三角形で笑い顔に特徴がある。額の内面中央に「東大寺　後二　延均師」と墨書がある。
顔面の赤色彩色はEDS分析により鉛丹が主で朱は従と判明した。唇の彩色は朱が主で、鉛丹は従であった。縦一材で作る。木芯は頭頂前方より顎下端を通る。右目上に枝節の木芯が通る。面内部は外部形状に合わせていない。眼、鼻孔、口は貫通させる。制作当初に削り過ぎたためか、右目尻裏面に木屎を盛る。頭頂部には金銅製の円盤が4本の釘で止められている。3段に毛を貼る。彩色は内面を除いて、全体を黒漆塗とする。肉実部は白色顔料を重ねて、鉛丹を塗る。部分的に朱を重ねて塗る。
下唇から下あごにかけて大きな割れがあり、顎の一部が欠損する。後頭部中央に大きな亀裂がある。いずれも補修を施す。

東京国立博物館や藤田美術館に数面の「酔胡従」が残る。

1. 伎楽面 酔胡従(東京国立博物館) – 重要文化財 飛鳥時代・7世紀 3面ある。
2. 伎楽面 酔胡従(藤田美術館?) – 東大寺/相李魚成作/天平勝（宝四年四月）九日と朱漆あり。
3. 法隆寺旧蔵「酔胡従」(東京国立博物館法隆寺宝物館)展示。飛鳥時代が4面、奈良時代・8世紀製作の乾漆造が4面ある。

No	管理番号	最終出展~
1	木彫 第３号	1964年
2	木彫 第５号	1964年
3	木彫 第６号	1981年
4	木彫 第７号	1983年
5	木彫 第12号
6	木彫 第13号
7	木彫 第14号
8	木彫 第16号	1989年
9	木彫 第18号	1960年
10	木彫 第20号	1988年
11	木彫 第21号	1960年
12	木彫 第25号	1959年
13	木彫 第26号	2013年
14	木彫 第28号	1962年
15	木彫 第29号	1962年
16	木彫 第33号	1962年
17	木彫 第34号	1958年
18	木彫 第35号	2015年
19	木彫 第36号	1959年
20	木彫 第37号	1958年
21	木彫 第38号	1958年
22	木彫 第39号	1961年
23	木彫 第40号	1958年
24	木彫 第42号	1961年
25	木彫 第46号	1961年
26	木彫 第49号	1964年
27	木彫 第51号
28	木彫 第55号	1995年
29	木彫 第57号	2017年
30	木彫 第59号
31	木彫 第64号
32	木彫 第66号
33	木彫 第67号	1962年
34	木彫 第68号	1964年
35	木彫 第69号	1962年
36	木彫 第74号	1962年
37	木彫 第75号
38	木彫 第77号	1974年
38	木彫 第81号	1962年
39	木彫 第82号	1961年
40	木彫 第83号	1962年
41	木彫 第86号	1977年
42	木彫 第87号	1960年
43	木彫 第89号	1990年
44	木彫 第90号	1960年
45	木彫 第91号	1964年
46	木彫 第92号	1961年

• 伎楽面 木彫第57号

1. 1961年 – 第14回
2. 2017年 - 第69回

• 名称 ：伎楽面 木彫第57号
• 倉番 ：南倉 1
• 用途 ：楽器・楽具
• 技法 ：木竹工
• 寸法 ：縦27.7cm,横21.2cm,奥行30.6cm,重さ733g
• 材質：桐　黒漆地　顔面は彩色（赤 一部は銀彩・墨描） 油塗　頭部は貼毛（馬毛） 金銅円板装着　鹿革紐

1. 奈良国立博物館(2008)「正倉院展60回のあゆみ」奈良国立博物館
2. 成瀬正和、山片唯華子(2006)「伎楽面」（年次報告）［正倉院年報］28号,pp.71〜72,116