蘇芳地金銀絵箱(すおうじきんぎんえのはこ)は、正倉院に保存されている木製の箱である。
印籠蓋造りの長方形の献物箱で、26号と27号は床脚が付いている。28号は床脚がない。他の類例から、28号も当初は床脚を備えていたものと思われる。箱本体は本体の桜材の外側に蘇芳を塗って紫檀に似せる。26号と27号は同じ作りであるが、縦横サイズが逆である・26号の畳摺の裏に「東小塔」の墨書銘がある。767年(神護景雲元年)創建の東大寺東小塔院の献納されたと分かる。
外側の表面に金銀泥で鳥や花などの文様を描く。宝相華の上で舞踏・奏楽する3名の童子が描かれる。その上下に隠し絵のように鳳凰を描く。側面にも宝相華唐草文、鳳凰、蝶を配する。内面は淡緑色地に白色で小四弁花を描く。26号の鳥は想像上の鳥、27号は雀、ホンセイインコ、28号の鳥はインコ、カモ、ツル、ヤツガシラである。26号蓋横の銀泥の連珠文の下に元の文様の金泥の花文が残る。肉眼観察および赤外線撮影から、彩色の書き直しが認められた。
26号と27号は桜であるが、28号は檜である。26g号はXDRと可視分光スペクトル分析により、淡紅色部分と白色部分にはラックと鉛白を混ぜて使用していることが判明した。可視分光スペクトル分析により地の褐色部分には蘇芳が使われていることが立証された。
- 奈良国立博物館(2022)『正倉院展 第74回』仏教美術協会
- 柿澤亮三・平岡考・中坪禮治・上村淳(2000)「鳥の羽毛と文様」正倉院紀要第22号,p.26
- 鶴真美・山片唯華子(2022)「色料調査」年次報告、正倉院紀要第44号,pp.91-92
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