古代史の散歩道

表面に鍍金を施す。柄の部分は鳳凰の尾の形をかたどる(参考文献1)。刃に半円形の受けの痕跡がある。交差する部分に孔をあけ、座金をあてて軸を通している。

韓国?慶州市?の雁鴨池?からほぼ同型で寸法が似る古代のはさみが発見された。その品は先端金具が残されており、金具により切断されたものが落下しないように工夫されている(参考文献2)。新羅との活発な交流を証明する品である(参考文献3)。参考写真は国立慶州博物館?の剪子である。
X字型の鋏は、最も古い時期のものであり、中国や韓国から持ち込まれたと推測されている(参考文献4)。

蝋燭は仏教?と共に伝来したと言われるため、芯切り鋏も共に渡来したと想定される。当時の蝋燭の芯は燃えにくいため時間が経つと長く伸び、炎が大きくなる。そこで定期的に芯の先を切らなければならなかった。金属製で、持ち手よりも先端で切れるＸ字型の鋏が適している。刃の幅を広くし、切った芯が刃の上に残るように工夫している。

花切はさみ説がある。枝に咲く花を枝ごと切りたい時はＸ字型の方が楽に切れる。この場合、刃が幅広くなっているのは修飾のためと解釈される。

蛍光Ｘ線分析の結果、この剪子の材質は、白銅（高錫青銅）と確認された(参考文献5)。

1. 1963年? - 第16回　 「金銅剪子」
2. 1969年? - 第22回　 「金銅剪子」
3. 1983年? - 『日本の金工』(東京国立博物館)
4. 1988年? - 第40回　　「金銅剪子」
5. 2002年? - 第54回 「白銅剪子」
6. 2018年? - 第70回 「白銅剪子」

• 登録名：白銅剪子
• 倉番 ： 南倉 33
• 用途 ： 調度?
• 技法 ： 金工
• 寸法 ：長22.6cm 重183.6g　厚　0.2cm
• 材質・技法 ：青銅（銅68%・錫18%・鉛４%）

1. 国立慶州博物館
2. 白銅剪宮内庁
3. 奈良国立博物館(2008)『正倉院展　六十回のあゆみ』奈良国立博物館
4. 森正士(1993)『正倉院宝物にみる仏具・儀式具』奈良国立博物館>
5. 正倉院事務所編(1995)『正倉院宝物　宮内庁蔵版　7　南倉』毎日新聞社