縄文時代、弥生時代、古墳時代、飛鳥時代、平安時代など日本古代史の出来事と検討課題の考察を行う。考古学の成果も取り入れ、事実に基づき、合理的な歴史の再構築を図る。

瑠璃坏(るりのつき,Dark Blue Glass Cup)は奈良県奈良市正倉院に伝わる紺色のカップ形ガラス坏である。紺瑠璃坏とも呼ばれる。

概要

本体下部に銀製の脚をつける。小さなガラス環にそれぞれつなぎ目があり、全て下を向いている。金属製の受座(脚9は明治時代の補修の際に金工家によって制作されたものが付けられた。補修後に、もともと付けられていたと思われる受座が同じ正倉院から見つかった。忍冬文を透かし彫りした鍍金銀製の金具で明治38年5月に正倉院の塵芥中からみつかった。この六方放射の忍冬文はガラス坏の下段の環形にうまくはめることができた(参考文献1,p.145)。しかしササン朝ペルシャの輸出品は全て金属製の受座がない状態であった(参考文献1,p.165)。受座の金具は飛鳥時代の日本、中国、新羅?のいずれかで取り付けされたと推定される(参考文献1,p.165)。

構成

アルカリ石灰ガラス製で、紺色の発色はコバルトを使う。表面に同質のガラス輪を貼る。ガラス輪は上段に8個、中段に8個、下段に6個の合計22個が配される。
高度な技巧と手間のかかる方法で環文が溶着されている。

由来

由水常雄によれば7世紀前半(ササン朝ペルシャ時代末期)に王室工房の技術を受け継ぐ民間工房で製作されたガラスと推定される(参考文献1,p.163)。台座に使われている忍冬唐草文の流行は7世紀にみられるということから、このガラスの到来年代は7世紀と考えられる。
正倉院の宝物目録に登録されたのは鎌倉時代?の1193年(建久4年)である。日本には遅くとも7世紀には日本に到来したものと考えられる(参考文献1,p.165)。

類例

  • シャルルーマーニュ大帝聖餐坏
    • ドイツ・ハーフェルシュタット教会蔵。7世紀から9世紀製作。
  • 凸出円文カット・グラス坏
    • ヴェネツイア、サン・マルコ大聖堂蔵、5世紀から6世紀製作。
  • 韓国慶尚北道漆谷郡東明面、松林寺五重塼塔出土の環文装飾緑琉璃舎利坏
    • 7世紀から8世紀。統一新羅、高麗。環文内に真珠を連珠文風に貼付した状態で出土した。韓国・国立大邱博物館。韓国指定宝物 No.325。
解体修理に伴う1959年の調査で発見された。高さ7cmの坏である。
緑色透明のソーダ石灰ガラス製であり。上中下段3段に各4個ずつ緑色の坏と同じ素材のガラスの環文が溶着されている。高台には漆製とみられる台が取り付けられる。

展示歴

  1. 1949年? - 東京国立博物館、御物特別展。
  2. 1960年? – 第137回
  3. 1966年? - 第19回
  4. 1983年? - 第36回
  5. 1994年? - 第46回
  6. 2012年? – 第64回

管理

  • 登録名:瑠璃坏
  • 倉番 : 中倉 70
  • 用途 : 飲食具
  • 技法 : ガラス
  • 寸法 : 口径8.6cm,高11.2cm,重262.5cm
  • 材質 :アルカリ石灰ガラス(紺色) 脚は銀台鍍金 毛彫 魚々子地 蓮弁様受座は新補

参考文献

  1. 由水常雄(1994) 『正倉院ガラスは何を語るか』中央公論新社
  2. ドロシー・ブレイア・岩田糸子・吉田晃雄・上松敏明訳(1998)『日本の硝子史』日本硝子製品工業会
  3. 奈良国立博物館(2008)「正倉院展六十回のあゆみ」奈良国立博物館

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