縄文時代、弥生時代、古墳時代、飛鳥時代、平安時代など日本古代史の出来事と検討課題の考察を行う。考古学の成果も取り入れ、事実に基づき、合理的な歴史の再構築を図る。

紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく,Ivory Ruler Stained Red and Incised with Bachiru Designs of Birds and Flowers)は正倉院に収蔵されている天平時代に用いた物差?である。

概要

北倉に2つ(甲、乙)、中倉に4つ(第1号から第4号)ある。
  • 由来
甲、乙は国家珍宝帳に記載された品である。「紅牙撥鏤尺二枚」と記され、赤漆文欟木御厨子に納められていた。『大唐六典』には毎年二月二日に撥鏤尺と木画紫檀尺を皇帝に捧げる儀式が行われていたので、そうした儀式で使われたのであろう。
  • 紅牙撥鏤尺 甲・乙
象牙を染め、その表面を浅く彫って文様を白く彫りあらわす撥鉚技法で製作された。寸の目盛りだけで実用品ではなく、儀式用と考えられる。表は一寸ごとの界線で十区に分け、唐花文5と鳳凰、尾長鳥、花鹿、飛鳥、水鳥をそれぞれ表す。
  • 紅牙撥鏤尺 第一号から第四号
第一号から第三号はそれぞれ表面を10区に分け、唐花文、花鹿、鴛鴦を交互に配する。側面には小花文を表す。裏面に山岳、花弁、飛鳥を配す。
第四号は表の上半分、裏面の下半分を五区に分ける。唐花、鴛鴦で飾る。その他の部分は童子、迦陵頻伽?、鳥を刻む。ところどころに緑、黄で彩色する。
  • 素材
牙はインド産の象牙で、硬質で上等のものである。牙の表面を塗る染料は紅色色素(綿臙脂)を用いた。赤色は染色に臙脂が用いられている。蛍光X線分析により緑色部分は銅を用いることが判明した。X線回析で緑色顔料はアタカマイトと判明した。

北倉甲

展示歴

  1. 1959年 - 正倉院宝物展(東京国立博物館
  2. 1964年 - 第47回
  3. 1976年 - 『日本の武器武具』 『王朝美術名品展』 (東京国立博物館)
  4. 1986年 - 第17回
  5. 1995年 - 第38回
  6. 2006年 - 第58回
  7. 2019年 - 第71回

管理

  • 名称 :紅牙撥鏤尺 甲
  • 倉番 :北倉 13
  • 用途 :儀式具
  • 技法 :牙甲角
  • 寸法 :長30.3 幅3.0 厚1.0
  • 材質:象牙 紅染 撥鏤 白緑・黄の点彩

北倉乙

展示歴

  1. 1946年 - 第1回
  2. 1956年 - 第10回
  3. 1984年 - 第36回
  4. 1990年 - 日本美術名品展』(東京国立博物館)
  5. 1998年 - 第50回
  6. 2009年 - 『皇室の名宝―日本美の華』二期:正倉院宝物と書・絵巻の名品(東京国立博物館)

管理

  • 名称 :紅牙撥鏤尺 甲
  • 倉番 :北倉 13
  • 用途 :儀式具
  • 技法 :牙甲角
  • 寸法 :長29.8 幅2.6 厚0.7
  • 材質:象牙 紅染 撥鏤 緑青の点彩

中倉第1号

展示歴

  1. 1940年 - 帝室博物館、皇紀2600年記念正倉院御物特別展
  2. 1957年 - 第11回
  3. 1981年 - 特別展『正倉院宝物』(東京国立博物館)
  4. 2003年 - 第55回

管理

  • 名称 :紅牙撥鏤尺 第1号
  • 倉番 :中倉 51
  • 用途 :儀式具
  • 技法 :牙甲角
  • 寸法 :長30.7 幅3.1 厚0.9
  • 材質:象牙 紅染 撥鏤 黄・緑の点彩

中倉第2号

展示歴

  1. 1953年 - 第7回
  2. 1963年 - 第16回
  3. 1985年 - 第37回
  4. 2011年 - 第63回

管理

  • 名称 :紅牙撥鏤尺 第2号
  • 倉番 :中倉 51
  • 用途 :儀式具
  • 技法 :牙甲角
  • 寸法 :長30.2 幅3.0 厚0.9
  • 材質:象牙 紅染 撥鏤 黄・緑の点彩

中倉第3号

展示歴

  1. 1979年 - 第32回
  2. 1992年 - 第44回
  3. 2015年 - 第67回

管理

  • 名称 :紅牙撥鏤尺 第3号
  • 倉番 :中倉 51
  • 用途 :儀式具
  • 技法 :牙甲角
  • 寸法 :長29.7 幅2.3 厚0.8
  • 材質:象牙 紅染 撥鏤 黄・緑の点彩

中倉第4号

展示歴

  1. 1949年 - 東京国立博物館、御物特別展
  2. 1957年 - 第11回
  3. 1974年 - 第27回
  4. 1990年 - 第42回
  5. 2005年 - 美の国日本(九州国立博物館)

管理

  • 名称 :紅牙撥鏤尺 第4号
  • 倉番 :中倉 51
  • 用途 :儀式具
  • 技法 :牙甲角
  • 寸法 :長29.6 幅2.3 厚0.8
  • 材質:象牙 紅染 撥鏤 黄・緑の点彩

参考文献

  1. 奈良国立博物館(2008)『正倉院展六十回のあゆみ』奈良国立博物館
  2. 木村法光・長島正春(1980)「」年次報告,正倉院紀要 第2号,pp.71-73
  3. 中村力也・田中陽子・尾形充彦・成瀬正和(2013)「染料調査」年次報告,正倉院紀要 第35号,pp.66-69

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